衛星放送まめちしき

衛星放送まめちしき

4K8K衛星放送における変調方式

■変調とは
電波はその言葉通り「波」のような性質を持ちます。電波を送信するための基本信号(これを搬送波という)に対し、情報を伝えるために波を変化させること「変調」と言い、変調方式には周波数変調、振幅変調、位相変調、パルス変調等があります。
BSデジタル放送、いわゆる2K衛星放送では、「TC-8PSK」という変調方式で番組を送信しています。一方、4K8K衛星放送は「16APSK」という変調方式で番組を送信しています。

■TC-8PSKと16APSKの違い
TC-8PSKと16APSKの大きな違いは、伝送容量です。1中継器[1]あたりの情報ビットレートは、TC-8PSKが52.17 Mbpsであるのに対し、16APSKは99.9552 Mbpsと、約2倍の伝送容量となっています。TC-8PSKで行われている2K衛星放送(Full HD)の画素数[2]は、約207万画素で、1中継器あたり2~4番組を同時に送信していますが、16APSKで行われる4K衛星放送は、約829万画素で、1中継器あたり3番組を同時に送信することが可能となっています。ちなみに、8K衛星放送の場合、3318万画素となり、1中継器で1番組を送信しています。

伝送容量が多くなり、メリットが多い16APSKですが、同じ周波数を使用し、伝送容量が多くなると高い所要CN比[3]が必要なため降雨減衰の影響(受信レベルの低下)をより受けやすくなります。このため、降雨減衰に対応すべく、降雨の相関が小さい二地点間に地球局を設置する、サイトダイバーシティが重要となり、ご家庭のテレビで4K8K衛星放送が安心して見られるよう、運用・監視に努めています。

表1 ISDB-S(2K衛星放送)の諸元

表2 ISDB-S3(4K8K衛星放送)の諸元


図1 TC-8PSKの地球局受信信号のコンステレーション[7]

図2 16APSKの地球局受信信号のコンステレーション


[1] 地球局から放送衛星に対して送られる電波を放送衛星が受信し、地上(各家庭)向けの周波数に変換、電力を増幅する機能を持つものを、その性質から「中継器」と呼ばれる。2023年12月現在、日本のBSは、右旋12ch、左旋3chの物理chで放送しており(BSAT-4シリーズは右左旋12ch同時送信可能な機能を持つ)、その物理chごとに独立した中継器が用いられる。
[2] 画素数とはピクセルの総数の意で、2K(Full HD)は縦1920個×1080個を敷き詰めた数となる。4Kは縦3840個×2160個、8Kは縦7680個×4320個となり、それぞれ2Kの4倍、16倍となる。
[3] Carrier(搬送波) to Noise(雑音) Ratio(比)の略。C/N比が高ければ、伝送上の雑音の影響が小さく、良い受信品質である。BSにおける所要C/Nとは、放送に必要な伝送速度を実現するための回線品質のことである。
[4] 単位時間あたりに変化するシンボル数のことであり、変調速度となる。
[5] 変調速度の単位で、1baudは1秒に1回変調することを表す。
[6] BSの場合、1物理chの周波数帯幅が34.5MHzとなり、フィルタの帯域の端における通過特性の急峻さのこと。
[7] デジタル変調における信号の変化を座標上に配置したとき、その図が点となって表れ、その図が星座に似ていることからコンステレーション(constellation:星座)と呼ばれる。

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